着物紀行
May 18, 2016

紫色の染料は多年草ムラサキから

【紫色はムラサキから】

天然の染料ムラサキ。

丘陵の草地などに生える多年草です。

聖徳太子の時代に

冠位十二階で定められた最高位の色は紫でした。

紫でも濃い紫は最上位の色だったとか。

殊に位の高い人の衣服や冠には濃い紫色が使われました。

この紫色の原料が野草のムラサキの根、紫根です。

ムラサキの花は白色なのですよ。意外ですね。

ムラサキの花

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「手に摘みていつしかも見む紫の

根にかよひける 野邊の若草」

     (源氏物語第五帖「若紫」)

「紫」は義理の母親藤壺のこと。

「根にかよひける」は根で繋がる血縁関係を表し、

「若草」はまだ幼い美少女、後の源氏最愛の女性、紫の上のことです。

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このように王朝時代からムラサキの花は、文学にも登場し、

また染料としても使われていました。

濃い紫色に染め上げるには、大量のムラサキを用いたと、

平安中期に編纂された『延喜式』の巻十四「縫殿寮(ぬいどのつかさ)」の

「雑染用度(ざっせんようど)」に記載があります。

このムラサキを朝廷に献納するために全国で競って栽培されたようですが、

土が合わない地域もあり、栽培地は東は常陸、相模、武蔵、信濃、

西は太宰府、日向だったようです。

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ちなみに、紫根に含まれるシコニンという紫色の色素成分から

江戸時代の医師華岡青洲(1760-1835)が創薬した紫雲膏(しうんこう)は、

今でもやけど、傷、痔の薬として使われているそうです。

紫根と種子

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現在、このムラサキは全国的に生存の危機にさらされています。

絶滅寸前種に指定されているところの一つは京都府です。

王朝時代から親しまれてきた花ムラサキ。

また日本の地でふたたび蘇ってほしいものですね。

(参考資料・写真:同門5月号「京都北山 花景色」松谷茂)

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紫色の結城紬

 

Apr 5, 2014

結城紬って、知っていますか。

おはようございます。

日本の民族衣装である着物。
日常の中では着るチャンスって、そんなにありませんよね。

晴れの日、行事の日、会合のとき、観劇のときなど、ぜひ着て楽しみたいものです。

 

着物を楽しむ人は、「染めの着物」から「織りの着物」へと趣味が変っていくといわれています。

織りの着物は、肌になじみやすく、軽くて着やすいのが特徴です。
「織りの着物」つまり着やすい紬にみんな惹かれていくのですね。

 

紅花紬、黄八丈、小千谷紬、本場大島紬、牛首紬、久米島紬など、

紬は産地の名をとってこのように呼ばれています。

 

そんな中で、「結城紬」もまた格別の味わいがあります。

見た目には絹光りもせず、軽くて暖かく、素朴で独特な風合を持った織物です。

 

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室町時代に結城家から室町幕府・鎌倉管領に献上品として使われたところから

「結城紬」という名が生まれたと言われています。

 

P1100544               つむぎの館ミュージアムにて

 

江戸時代に、何度も倹約令や奢侈禁令が出ましたが、

老中水野忠邦による天保の改革(1841年)では、

お菓子や玩具から肌着までもが禁止の対象になったそうです。

 

でも、結城紬は、経糸に木綿糸、緯糸に紬糸(貫紬)にしたので、禁止令から外れ、

命を永らえることができました。

 

見かけは木綿のように見えることから、武士にも好まれていたことはよく知られています。

 

P1100548                                                  つむぎの館ミュージアムにて

結城紬は、真綿から手つむぎ糸や地機(いざり機)を使用するという工程をもつことから、

国の重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

 

 

この真綿の糸を作るためには、桑の木を育て、蚕を育てなければなりません。

気の遠くなるような作業を結城地方の農家の人たちは行ってきたのですね。

 

P1100534

P1100539           つむぎの館でのコースターづくりの体験

結城紬はたしかに高価なものですが、その反物の作成の工程を見れば、

いかに手がかかっているかがよく理解できます。

 

P1100559

P1100560             風情を今に残す奥順株式会社の暖簾

結城市にある「つむぎの館」という結城紬のミュージアムがあります。

奥順株式会社が提供しているところですが、小江戸風の町並みや喫茶も楽しめる素敵な空間です。

とってもくつろげる場所です。

お勧めですよ。

 

つむぎの館はこちらです。

 

P1100522

              反物ができるまでの工程を描く資料館

 

P1100564

古民家風の喫茶ルームで、珍しい桑の実のジャムを 

 

本日も最後までお読みださり、ありがとうございました。

花冷えには気を付けて、週末をお過ごしください。

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