【紫色はムラサキから】
天然の染料ムラサキ。
丘陵の草地などに生える多年草です。
聖徳太子の時代に
冠位十二階で定められた最高位の色は紫でした。
紫でも濃い紫は最上位の色だったとか。
殊に位の高い人の衣服や冠には濃い紫色が使われました。
この紫色の原料が野草のムラサキの根、紫根です。
ムラサキの花は白色なのですよ。意外ですね。
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「手に摘みていつしかも見む紫の
根にかよひける 野邊の若草」
(源氏物語第五帖「若紫」)
「紫」は義理の母親藤壺のこと。
「根にかよひける」は根で繋がる血縁関係を表し、
「若草」はまだ幼い美少女、後の源氏最愛の女性、紫の上のことです。
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このように王朝時代からムラサキの花は、文学にも登場し、
また染料としても使われていました。
濃い紫色に染め上げるには、大量のムラサキを用いたと、
平安中期に編纂された『延喜式』の巻十四「縫殿寮(ぬいどのつかさ)」の
「雑染用度(ざっせんようど)」に記載があります。
このムラサキを朝廷に献納するために全国で競って栽培されたようですが、
土が合わない地域もあり、栽培地は東は常陸、相模、武蔵、信濃、
西は太宰府、日向だったようです。
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ちなみに、紫根に含まれるシコニンという紫色の色素成分から
江戸時代の医師華岡青洲(1760-1835)が創薬した紫雲膏(しうんこう)は、
今でもやけど、傷、痔の薬として使われているそうです。
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現在、このムラサキは全国的に生存の危機にさらされています。
絶滅寸前種に指定されているところの一つは京都府です。
王朝時代から親しまれてきた花ムラサキ。
また日本の地でふたたび蘇ってほしいものですね。
(参考資料・写真:同門5月号「京都北山 花景色」松谷茂)
紫色の結城紬