【七十二候から】49 「鴻雁来る(がんきたる)」

【七十二候から】49

鴻雁来る(がんきたる)」

皆様、おはようございます。

寒露の初候。

「寒露」は、露が冷たく感じられてくる頃のこと。

空気が澄み、夜空に冴え冴えと月が 明るむ季節です。

雁が北方で繁殖し、日本に子育てにやってくる頃です。

雁(がん、かり)は、10月初め頃に渡来し、翌春の3月頃、また北地へと帰っていきます。

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雁の群れ

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そう言えば、子どもの頃、

雁の群れがVの字をなして、空を飛んでいく姿をよく見かけたものです。

鳴き声も、カリカリ、とか、キャクキャクと、表現されますね。

甲高い声が澄んだ秋空に響き渡ります。

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国定忠治の『赤城山』。

「 赤城の山も今夜限り、生まれ故郷の国定の村や、

縄張りを捨て、国を捨て、

可愛い子分のてめえ達とも 別れ別れになるかどでだ。 」

と、親分忠治。

そして、子分巌鉄が、

「 ああ、雁が鳴いて 南の空へ飛んで往かあ! 」と、

親分と別れる寂しさを訴えます。

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ちょうど雁が日本に渡来している時期のお話なのでしょうね。

寂しさが身にしみてきます。

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お月様

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もう一つ、雁と言えば思い出すのが、

森鴎外の『雁』です。

もうだいぶ前に読んだのでストーリーは忘れましたが、

高利貸しの男の妾になったうら若きお玉の思いの健気さと哀しさを思い出します。

お玉が慕うのは医学生岡田。

無縁坂で岡田を待つお玉。

ところが、不忍池から雁を持って下宿に帰る岡田とお玉は、ただすれ違うだけ。

岡田が明日ドイツへ留学することを知らないお玉は、

きっとその後もずっと岡田を無縁坂で待ち続けたのでしょう。
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「無縁坂」というのは、二人はもう会えないことの象徴でしょうか。

「雁」も北国へ帰っていくことから、岡田が旅立つことの象徴でしょうか。

何ともやるせない気持ちになります。

恋とは、淡く切ないものなのですね。

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空と雲