初釜で味わう以心伝心のおもてなし

昨日の「初釜」はお天気に恵まれて、よい雰囲気を味わうことができました。

茶道の心は「和敬清寂」といわれます。

主人も客もお互いに心を穏やかに和して、つつしみ敬い、茶室のしつらえを味わい、清らかな雰囲気を大切にすることです。

2014-01-14 11.02.46-2      この写真は、待ち合いのしつらえの準備をしている場面です。

茶室に入る前の外の「待ち合い」のところから、もう既に主人のおもてなしは静かに始まっています。

まさに「以心伝心」です。

にじり口から身をかがめて薄暗い茶室に入ります。

先にお軸、お花、炉、屏風などを客は拝見します。

薄暗い空間で、炭を炉に入れるお手前を拝見してお菓子をいただきます。

次第に炭とお香の香りが漂ってきます。

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次に客は部屋をいったん出て外の待ち合いに戻り、茶室に入り直しをします。

その空間には光が少し差し込み、お軸が輝きます。

そこで濃い茶をいただきます。一つの茶碗を回し飲みします。

暗さから明るさへ。

冷たさから暖かさへ。

緊張した雰囲気から和らいだ雰囲気へ。

次第に身も心も空間に融け込んでいくような感じです。

凛とした中でもその二局を体験することで、それぞれのよさが引き立ちます。

愛と悲しみ。

歓びと嘆き。

美しさと醜さ。

私たちは今生でどちらも体験することで、深い人の思いに共感ができるようになるのですね。

昨日はそんなことを初釜を味わうことができました。
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懐石料理は、禅宗の食事ととてもよく似ています。

すべては黒いお椀です。いただくものは、お刺身、野菜の煮物や焼き魚などなど。

最後にご飯を一口残しておきます。

焦げたお米の入ったお湯がやってきます。

 

 

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みそ汁椀とそのご飯のお椀に、そのお湯を注ぎます。

そこで一緒にいただくお新香でお椀の内側をきれいにしながら、

ご飯を食べきり、お椀の中味を吸いきります。

最後に懐紙で内側を綺麗にふいて、椀類を綺麗に重ねてお返しします。

食べ残しがあれば、自分で持って帰ります。
 
客のお食事がすむと、各自のお盆の上に、一斉に箸を音が出るように置きます。

それが食事は終わりましたの合図になります。

なかなか主人には、その音が聞こえないので、

つい声を出して「終わりました」と言ってしまいますが・・。

 

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以心伝心。

客が茶室のにじり口から出入りする時、最後の客は、その戸を音を立てて閉めます。主人に聞こえるようになるべく大きな音で。
それが「みな入りました」「みな出ました」の言葉に替わる合図なのです。
 
懐石料理をいただいて、いま食事が終わりましたというときも、お盆に箸を落として音を立てて、主人に知らせるのです。
 
日常にはない、何とも言えない静寂さの中での音の素晴らしさ、心の表現を感じますね。
 
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