はかなくも強き女流作家 樋口一葉

今日は勤労感謝の日ですが、樋口一葉忌でもあります。

明治の女流作家、五千円札でおなじみですね。

享年25歳(明治29年)。

 

貧しい下町の庶民生活の悲哀や、女の悲しみを叙情的な擬古文でつづりました。

「たけくらべ」「十三夜」「にごりえ」などロマン的香りの高い秀作を

次々と発表したのです。

 

 

彼女にはこんなエピソードがあります。

 

一葉には、父親が将来を見込んで決めた婚約者渋谷三郎がいました。

 

一葉の兄則義が父を後見にして相続戸主となりましたが、事業に失敗し、

多額の借金を残して死去します。

その後父が亡くなり、一葉は樋口家の戸主となります。

 

多額の借金を抱え、戸主となった一葉。三郎を婿養子とする結婚に、

後日仲介人が法外な結納金を要求してきました。

一葉の母は立腹してこの請求を断り、破談になったということです。

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栗城さん15

 

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一葉の父の見込みどおり三郎はどんどん出世していきます。

出世していく三郎に対し、困窮していく一葉は日記の中でこんなことを書いています。

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「思へば世は有為転変也けり」

「此人のかく成りのぼりたるなんことに  浅からぬ感情ありけり」と。

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一葉の思いはいかばかりか、押さえた表現の中に、

何とも言えない思いが込められているように思います。

ぐっとこらえた強さを感じます。

 

創作活動はわずか4年にすぎなかったものの、

その中で、自らの経験をも生かしながら、

女性らしい微妙な感情を細やかに描いたのですね。

また読み返してみたくなりました。

栗木さん12