口の袖あてて ゆく人冬めける 高浜虚子
11月になりました。
時雨や落ち葉や木枯らしなど、「冬めき」を肌で感じる季節です。
江戸庶民の冬の装い。
羽織は男性が着るものとされていました。
武士には功があると、将軍から羽織を賜り、次第に町人男性にも広まりました。
女性の場合は、厳冬の時には半纏を着ることができましたが、
殊に上層部の人々は半纏をきらって、まれに雪中での道行コートを着ていました。
女性は絹の被りものを使っていました。
お高祖頭巾(おこそずきん)というものです。
日蓮上人の像の頭巾に似るところから、縮緬(ちりめん)などの四角い布にひもをつけて、
目だけを出して頭・顔を包む防寒用頭巾でした。
また、袖(そで)頭巾といわれ、衣服の袖の形をしていて、袖口から顔を出すようになっていました。
若い女性が身につけたのは紫、薄い紫と赤。
中年女性の場合は、濃い青、灰色、鉄灰色だったそうです。
よく時代劇で見かけますよね。
町行く女性の冬の装いは、意外にカラフルだったのですね。
浮世絵師鈴木晴信の「雪中相合傘(せっちゅうあいあいがさ)」では、
男女と見られる二人のカップルが白と黒の頭巾をそれぞれかぶっています。
そうすると、色にもこだわりがなかったのでしょうか。
今でも「君の名は」の「真知子巻き」のように、若い女性が頭を包むようにショールで巻いて、町を歩いています。あれは結構暖かいのです。
これからは女性の防寒着ファッションも見ていて楽しなる季節です。
今月もどうぞよろしくお願いします。