父との思い出〜童謡「里の秋」

私が秋になると思い出す歌、

それは父との思い出の童謡『里の秋』です。

 静かな静かな 里の秋  

 お背戸に木の実の 落ちる夜は

 ああ 母さんと ただ二人  

 栗の実煮てます 囲炉裏端

 

小学生の頃、郷里の家の二階でこの曲をオルガンで弾いていた時、

外の庭にいた父から、やめないでもっと弾いてくれと、言われたのを覚えています。

当時父は、宮城の気仙沼港を寄港として、主にマグロ漁業船の無線通信士をやって
いました。

父親(私から見れば祖父)が病弱で入退院を繰り返していたためにお金が必要だったのです。

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あるときはアリューシャン列島まで、あるときは北海道までと、父は遠出をしていたので、

家に戻るのは年に、二、三回程度でした。

父が40歳の時、陸に上がりました。

その直前に乗らないかと誘いを受けた船に、気が進まず辞退したらしいのですが、

その船は洋上、転覆してしまったそうです。

父はそれを辞退したことで命拾いをしました。
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栗と紅葉

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まさに、「板子一枚 下地獄」の世界が海にはあります。

父が今も生きていられるのは、目に見えない人生の大きな選択をここでしたからでしょう。

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この童謡『里の秋』は、1945年に敗戦により失った領土からの引揚者の激励の
ためにNHKのラジオ番組で放送されたものだそうです。

私の父もこの曲を私にリクエストをしたのも、何か敗戦のころの思い出があったの
かもしれません。

 明るい明るい 星の空  

 鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は

 ああ 父さんの あの笑顔  

 栗の実食べては 思い出す

 

父がその後もしばらくの間 、海に出ていたので、

秋になると、この曲を思い出しては涙がこぼれたものです。

秋がやってくると思い出す『里の秋』です。

皆様も何か秋の思い出はありますか。
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秋ドライフラワー