沽券にかかわるとは
おはようございます。
「こけんにかかわる」という言葉、聞いたことがありますか。
「こけんにかかわる」というのは、
「品位、人格、体面にかかわる」という意味で使われていますね。
もともと「こけん」というのは、「沽券」とも書き、意味は売券のことでした。
江戸時代、地所や屋敷がこの沽券によって売買されていました。
今でいう「権利書」のことです。
「権利書」といえば、権威あるものとされていますね。
江戸庶民は約7割が借地で、その大半の30万人が長屋暮らしだったそうですね。
とすると、残りの3割の庶民は私有地で暮らしていたことになります。
この江戸庶民の私有地は町地といって、それは12もの種類があったそうです。
この町地は、古くから沽券によって売買されていたので、「沽券地」といったのです。
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そもそも、江戸時代には、現在の「地目」に類似した「町地」の制度があって、
江戸末期の土地の所有関係は、
町地20パーセント、官地寺社地40パーセント、武家地40パーセントの割合
だったそうです。
圧倒的に寺社地と武家地の占める割合が高かったのです。
ですから、江戸の庶民の大半は、熊さん、八つぁんのような狭い長屋暮らしがほとんどでした。
沽券に添付されていた「券帖」は、不動産を得るときに作成され、
町の名手五人の奥印を受け、売り渡しの証拠にしていました。
また、親子、親族に譲渡する際は、沽券に継紙(つぎがみ)し、
押印を加えることになっていました。
現在の登記書の役割を名主がやっていたわけです。
この厳格さは、今でも土地や建物の売買にも引き継がれているのですね。
昨今の登記簿は電子化までされています。
「沽券にかかわる」という精神は、
現在の民法でいう「信義誠実の原則」の精神の江戸版ともいえます。
江戸庶民の心根、心映えを見るような気がします。