黄金の国ジパングと虫の声
皆様、おはようございます。
「夜をこめて 麦つく音や きりぎりす」 (正岡子規)
宮城の郷里へ訪れる度に、新幹線から緑一面の水田が見えてくると、
故郷に帰ってきたなあという実感が湧いてきたものでした。
大分稲穂が実ってこうべを垂れ、少しずつ黄金色に変わりつつありますね。
「黄金の国ジパング」「瑞穂の国ジパング」
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この風景をながめていると、安らかな思いに浸れます。今年も豊作になるといいなあ。
夜は虫の合奏が聴こえてきます。
平安時代、鳴く虫を籠に入れて声を楽しむ風流が貴族たちの間で流行したそうです。
江戸時代になると、「虫売り」が登場しました。
長唄の『都(みやこ)風流』にも、「虫売り」が登場してくるのですよ。
売られていたのは、蛍、こおろぎ、鈴虫、蝉など。
虫籠も、扇形や船形など凝った作りの物が出回りました。
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また、虫が鳴くなかで俳句を作ったり、酒を酌み交わしたりする「虫聴き」も流行したそうです。
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日本人は音楽や言葉を聞く左脳で虫の声も聴くそうです。
だから、「ああ、いいなあ〜。風流だなあ〜。」と聴けるのですね。
ところが、虫の音を右脳で聞く西洋人には、雑音にしか聞こえないということです。
日本人の感性って、素敵ですね。
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少しずつ朝夕しのぎやすくなってきました。
今日も心豊かな一日をお過ごしくださいませ。
お知らせ
9月27日(水)午後1:00〜3:30
来年のお正月のおもてなし
吊るし雛にもなるお飾りを作ります。
お待ちしております。
【七十二候から】42 「禾乃登る(こくものみのる)」
【七十二候から】42
「禾乃登る(こくものみのる)」
皆様、おはようございます。
処暑の末候、「禾乃登る(こくものみのる)」頃です。
田んぼの稲穂が黄金色に色づき始めました。
収穫時期が待ち遠しいですね。
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「禾(のぎ)」とは、稲などの穂先の毛のことですが、
稲や麦、稗、粟などの穀物のことを総称して、そう呼びます。
稲は、「稲禾(とうか)」「禾稲(かとう)」ともいいます。
稲は、縄文時代に日本に伝わったといわれています。
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「禾」穂先の毛 ウィキペディアより
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一方で、台風の襲来や強風も心配な時期です。
今年は雨の被害が多くて農作物への影響がとっても心配されます。
そのために、農業が無事に進むようにと祈るお祭りも行われます。
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富山県八尾(やつお)の「おわら風の盆」もその一つです。
八尾は立山連峰を越えて日本海から強い風が吹き込む土地です。
この風が稲作に深刻な被害をもたらしてきました。
風の神様に十分に稲が実りますように、風害に見舞われないようにと、
お祈りするお祭りです。
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「風の盆」は、
風を鎮める「風祭り」と「盆踊り」が一つになって変化した風習と考えられています。
三味線と太鼓、胡弓の独特な調べにのって無言で踊る風の盆。
地元の皆さんの見せどころです。
町ごとに総出で揃いの浴衣で、唄に演奏に踊りと、圧巻ですね。
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胡弓の音色がもの悲しく、何とも言えない哀愁を誘います。
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編み笠を深くかぶり、無言で踊る姿には、優美な色気が漂いますね。
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その哀愁漂う光景から小説やヒット曲『風の盆恋歌』などが生まれたのですね。
「蚊帳の中から 花を見る
咲いてはかない 酔芙容」
石川さゆり『風の盆恋歌』
一度は是非見に行きたいこの「おわら風の盆」。
前夜祭と9月1日から3日までの3日間、
夜を徹しての、夢のような、日本の素晴らしいお祭りです。
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写真:おわら風の盆 田中進さん提供
【七十二候から】41 「天地始めて粛し(てんち はじめてさむし)」
【七十二候から】41
「天地始めて粛し(てんち はじめてさむし)」
皆様、おはようございます。
今日は昨日とはうって変わって、爽やかな秋めいてた風を感じます。
この時期は、夏の気が落ち着いて、万物があらたまるとされています。
ちょうど台風もやってくる頃です。
前回も書きましたように、立春から数えて210日目が「二百十日」と呼ばれ、
台風がやってくる日とされていますよね。
今年は続けざまに何回も台風がやってきています。
関東以北も直撃の風雨によって交通網に影響が出ています。
外出も控えなければなりません。
また台風がやってくるという予報です。
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古い時代には、台風のことを「野分(のわき・のわけ)」と呼んでいました。
野の草を分けて吹き通る風のことをいいます。
野原を吹き渡る涼やかな風は「野風(のかぜ)」「野間風(のまかぜ)」といいます。
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吹きまよふ 野風をさむみ
秋はぎの うつりゆくか 人の心の
常康親王『古今和歌集』
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季節は秋へと移り変わり、人の心の移り変わりを「野風」になぞらえているのですね。
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「野風」とは別に、「野分」について、
台風の吹き荒れる様が「源氏物語」や「枕草子」にも記されています。
「野分」というと、なんとも柔らかな表現ですが、
台風の恐ろしさ、台風一過の状況は今も平安の時代も変わりがなかったようです。
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野分 例の年よりもおどろおどろしく
空の色変りて吹き出づ
紫式部『源氏物語』第二八帖
(花の色の美しさを愛でていると、そこに野分が、いつもの年よりも激しく、空も変わって風が吹き出しました。)
台風がくる様を「おどろおどろしく」というふうに表現しているのですね。
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野分のまたの日こそ
いみじう あわれに をかしけれ
清少納言『枕草子』第二〇〇段
(野分の吹き荒れた翌日は、大変にしみじみと胸にくるものがあります。)
これは台風が過ぎた後の様子を述べています。
台風一過、大きな木も倒れ、枝も折られ、萩や女郎花も横に倒れてしまって、その思いがけない様子に痛々しいと、述べています。
昨夜は台風のために夜もろくろく眠れなかったであろう、うら若き女性のことがその後書き綴られていきます・・。
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昨今は、テレビニュースの「台風情報」で、
大きな被害の恐ろしさだけが強調されているようにも見受けれらます。
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王朝文学から、
秋への季節の移り変わりの、何かもののあわれを
感じてみてはいかがでしょうか。
【七十二候から】40 「綿綿柎開く(わたのはなしべひらく)」
【七十二候から】40
「綿綿柎開く(わたのはなしべひらく)」
皆様、おはようございます。
今日は暑さが止むという「処暑(しょしょ)」。
もうそろそろ「二百十日」という立春から210日目がやってきます。
雷が襲来する頃とされていますが、ご存知でしたか。
昨日、再び関東以北が台風に見舞われました。
昨今の台風はゲリラ型と呼ばれる激しい台風です。
ご無事でお過ごしになりましたでしょうか。
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この処暑の初めの頃、綿(わた)の花のがく(柎・はなしべ)が開き始めるのだそうです。
そして、綿の種を包む綿毛をほぐして、綿の糸を紡ぐのです。
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写真:綿の実(蒴果・さくか)
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綿は日本の生活に欠かせないものでした。
座布団も布団も、夜具としての綿入れも。
どてら(厚く綿の入った丹前)(仙台弁で「どんぶく」)も、冬の生活には欠かせないものでした。
いつの間にか化学繊維や羽毛などに取って代わられてきましたね。
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写真:はぜた綿の実
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木綿の感触は汗ばむ季節にはもってこいです。
最近とみに若者の間で夏の木綿の浴衣が人気ですね。
もっと涼感やシャリ感を味わいたければ、綿絽や綿麻が好まれます。
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さて、日本では、
木綿は、799年に三河国にインド人によって綿の栽培がもたらされたということですが、
その後は明や朝鮮からの高価な輸入品となりました。
江戸時代中期頃に国内で綿の栽培が盛んに行われるようになったようです。
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栽培には温暖な土地が好まれ、肥沃な土地でなければならず、栽培にはお金のかかるものだったのです。
ですから、江戸庶民にはなかなか手が出るものではありませんでした。
木綿の着物を古着屋でなんとか手に入れたら、大事に大事に着たのでしょう。
新品の着物なら、車一台分の値段だったとか。
冬はその中に綿を入れて温かくし、夏場は単衣に仕立て直し、繕いをしながら着て、
ボロボロになったら、自分で雑巾やオムツにして最後まで使いきりました。
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「端切れ屋」「古裂れ屋」がやってきて買い取り、切り刻んで端切れにしてまた市場で売られたり、
「灰屋」がやってきて買い取り、燃やして灰にして、田畑の肥料や洗濯、藍染に使うためにまた売られていったり、
木綿が見事に最後まで使い切られていました。
その木綿一枚の着物が綺麗に大地に戻っていくという、大地を豊かにしていくという。
そんな循環型エコシステムを知らぬ間に作り上げていたのです。
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まだまだ大量生産、大量消費の時代の循環ビジネスが構築されている現代・・・。
そう言えば、
私の祖母なども洗い張りも上手、
母も着物仕立てが得意でした。
私たちも、お裁縫ももう一度見直さなくちゃいけませんね。
手元にある着物や帯でのリメイク講座、始めています。
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写真:「綿の実」2枚
賑町笑劇場
http://jhnet.sakura.ne.jp/meotomanzai/
【七十二候から】53 「霎時施す(しぐれときどきほどこす)」
【七十二候から】53
「霎時施す(しぐれときどきほどこす)」
皆様、おはようございます。
11月になりましたね。
さあっと雨が降ってはすぐ晴れる、そんな頃です。
「初時雨」
まさに、今がその時期ですね。
朝だけ降る「朝時雨」、
夕方降る「夕時雨」、
横なぐりに降る「横時雨」、
夜に降る「小夜時雨」。
天候が変わって時雨が降ることを「時雨れる(しぐれる)」といいます。
同じ雨でも「時雨」という言葉を使うと、何か優しい響きになります。
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西行のことを描いた『時雨西行』という長唄があります。
原曲は能『江口』です。
時雨降る季節、雨に濡れながら行脚している旅の僧西行は、
決してこの時雨の日の出来事は忘れまい、書き写しておこうと、最後に語ります。
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西行は、平安後期歌人・僧です。
出家前は武士(佐藤義清・憲清とも)で、鳥羽上皇の下で北面の武士として仕えていましたが、
その後出家し、諸国行脚し歌を詠みました。
自作の「ねがはくば 花の下にて春死なむ そのきらさぎの望月のころ」
という和歌のとおり、
文治六年(1190)の2月、73歳で入滅したと伝えられています。
『新古今和歌集』に94首、勅撰集の合計で266首が入集する当代第一等の歌人だともいわれています。
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さて、『時雨西行』に戻りましょう。
西行は、和歌を詠み、悟りの境地を得るために諸国を廻国修行して歩いていました。
時雨にあい、江口(大阪・大阪市東淀川)の里を訪れ遊女に一夜の宿を請うところから物語は始まります。
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遊女から一旦は断られてしまいますが、その後西行と遊女とは和歌を詠み交わします。
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「一夜の仮の宿」と「俗世」を掛け合わせて、
この世に執着してはいけないということを遊女は和歌で詠み返します。
西行は静かに目を閉じ心を静めます。
すると、典雅の調べが響き、六牙の象に乗ったまばゆい光を放つ普賢菩薩の姿が見えたのです。
目を開けば、目の前の遊女が語る言葉はこうであったのです。
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「迷いを離れた清浄な境界の大海に、煩悩の風は吹きません。
機縁が生ずれば必ずや悟りの波は立つものです。
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人は執着する心を捨てれば つらい世も恋もなくなりましょう。
人を慕ったり、人を待つことはやめましょう。
恋する気持ちや愛する気持ちを抱いて人を待てば、別れの嵐が吹き荒れます。
花が咲くさま、紅葉していくさま、満ち欠けてゆく月も、さまざまに降る雪も、
すべてはとどまることをせず変わってゆくものです。
過去のことに心を留めておいても何にもならないのです。
執着する心を捨てなさい。」と。
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なんと尊いことであろうか。なんともったいないことであろうか。
目を開けば遊女の姿。しかし、その遊女は、実は普賢菩薩の化身だったのです。
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舞踊では、この遊女江口を初めは遊女として表現し、後にその姿で普賢菩薩になるという変身を演じるところが大変難しい役どころです。
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この普賢菩薩を感得した西行は悟りを得ることができたというストーリー展開になっています。
この時雨の日、西行は人生の大きな転機を迎えたのですね。
一度、是非この舞踊もご覧になってみてはいかがでしょうか。
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西行(菊池容斎画・江戸時代)(ウィキペディアより)
【七十二候から】39 「蒙霧升降す(のうむ しょうこうす)」
【七十二候から】39
「蒙霧升降す(のうむ しょうこうす)」
皆様、おはようございます。
台風一過の後、
またもや強い雨が降り、外出には支障が出たことでしょう。
でも、大地や植物には十二分に水分が行き渡りましたもの、
今年の水不足も心配せずにすむことを祈っています。
さて、
この時期は深い霧が立ち込める頃。
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春は霞立ち、秋は霧けぶる。
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平安時代から、春は「霞」、秋は「霧」と、使い分けるようになったということです。
どちらも視界が閉ざされて遠くの景色が良く見えない状態のことをいいますね。
「霞」は気象用語としては用いられず、文学的な意味合いでの表現として使われています。
「霧」は、気象現象としては、視界1キロ未満のものが見える状態のことを指し、
1キロ以上10キロぐらいまで見える現象を「靄(もや)」と呼んでいます。
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「霞」は春の季語として、「霞たなびく」。
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澄んだ秋の月に対して、春の夜の月は「朧月」といいます。
「朧月夜」。
これもまた風流ですね。
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「霧」は秋の季語として、「霧雨(きりあめ・きりさめ)」「初秋(はつあき)霧」「夜霧」など。
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澄んだ秋の月、夜ぼんやり眺めながら、
ちょっと歌人になったつもりで、歌を詠んでみてはいかがでしょうか。
明日は満月を、来月は中秋の名月と十六夜を楽しむことができますね。
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山間部、海辺など運転の際は、霧で視界が狭くなりますので、
どうぞ十分にお気をつけくださいね。
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【七十二候から】38 「寒蝉鳴く(ひぐらし なく)」
【七十二候から】38
「寒蝉鳴く(ひぐらし なく)」
皆様、おはようございます。
先日の台風一過で、朝夕の風にもほんのり秋の風情を感じるようになりました。
都心でも、朝夕窓を開けていると、涼やかな風に生き返る思いがします。
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夕暮れのひぐらしの鳴き声や虫の合唱は、夏の終わりを告げているようです。
暑い、暑いと思っていた夏が、夢のように儚く去っていくような、
そんな思いに駆られます。
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ひぐらしは、カナカナカナ・・・、カナカナカナ・・・と、
夏の中盤から、
朝夕の比較的涼しく日差しが弱い時に鳴き始めます。
「ひぐらし」とは、日を暮れさせるという意味だとか。
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「ひぐらし」は俳句では秋の季語なのですね。
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蝉の一生は、長いようで短いものです。
枯れ枝や樹皮に産み付けられた蝉の卵は翌年の梅雨時に孵化して幼虫になり、
地中にもぐって、3年から7年もかけて、木の根から養分を吸いながら育ちます。
夏の日没後、地上に出てきて木に登り、夜中に羽化します。
天敵から身を守るためなんですね。
生まれたての蝉は翡翠色で、まるで宝石のようです。
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蝉としての寿命は数週間から1か月ほどといわれています。
成虫になって、子孫も残し、そして死んでいく・・・。
オスの蝉はメスを射止めるため、懸命に鳴き続けます。
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蝉の声が時折騒々しいなと感じられても、
彼らは精一杯の一生をおくっていることを忘れてしまわないように・・・。
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私たちも精一杯、夏の思い出を作りましょうね。
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【七十二候から】37 「涼風至る」
【七十二候から】37
「涼風至る(りょうふういたる)」
皆様、おはようございます。
立秋が過ぎたとはいえ、暑さ厳しい日々が続いていますね。
日中は暑いのですが、朝の一陣の涼しい風に秋の気配を感じる頃です。
ご挨拶は、夏の名残り、残暑見舞いとなります。
小さい秋がやってきます。
夏を惜しむ蝉の声から虫の声に次第に替わっていきますね。
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秋きぬと目にはさやかに見えねども
風の音にぞおどろかれぬる
(藤原敏行『古今和歌集』)
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立秋の日に詠んだ歌だということです。
秋がきたと目にははっきりと見えないけれども、風の音にはっと気づいたと。
平安時代の貴族は繊細な季節の変化に心ときめかせたのですね。
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秋には、鳴く虫を籠に入れてその声を楽しむ風流が貴族たちの間で流行したそうです。
江戸時代になると、秋の風情を楽しむ「虫売り」が登場してきます。
そして、風流人の間では、虫が鳴く中で俳句を作ったり、
酒を酌み交わしたりする「虫聴き」も流行したということです。
日本人ならではの、季節の楽しみ方ですね。
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「秋隣(あきとなり)」と呼ばれるこの時期。
残暑の中に、ちょっと秋の気配を感じてみませんか。
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【七十二候から】36 「大雨時行る(たいう ときどきふる)」
【七十二候から】36
「大雨時行る(たいうときどきふる)」
皆様、おはようございます。
夏の雨が、時折激しく降る頃です。
今朝も強い雨が降りましたが、パッと晴れ、雲の広がる青空が見えています。
雨後は、空も空気も晴れ晴れと気持ちがいいものですね。
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青空にむくむくと立ち上る入道雲。
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「入道雲」は雄大な積乱雲。
雲の頂が坊主頭のようにむくむくと盛り上がって見えるところから、
そう呼ばれています。
「屋根の瓦が照り返し 入道雲も上(のぼ)せつつ うろん臭げなうす笑ひ」
(高村光太郎)『道程』
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「うろん臭げな」というのは、「うさん臭げ」という意味で、
「怪しく疑わしい様子」という意味で使われているようです。
一雨欲しいところだけど、降るんだか、降らないんだか・・。
雲がうす笑いをしているようだということでしょうか。
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「坂東太郎」
関東平野を流れる利根川の異称ですが、
利根川の方向に生ずるところから、
白い雲のことをそう呼びます。
「坂東太郎は 東京にて夏の日など見ゆる 恐ろしげなる雲なり」
(幸田露伴)『雲のいろいろ』
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夏雲を恐ろしいものと捉え、「坂東太郎」という表現をしているのが、現代では新鮮に感じます。
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日本近代の詩人、小説家は、こんな風に夏の雲を表現していたのですね。
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夏は夕立も突然やってきます。
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入道雲ができて、雷とともに降ってくるにわか雨。
「驟雨(しゅうう)」
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本日も、どうぞ傘はお忘れなきように。
良き一日をお過ごしくださいませ。
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【七十二候から】35 「土潤いて溽し(むし)暑し」
【七十二候から】35
「土潤いて溽し暑し(つちうるおいてむしあつし)」
皆様、おはようございます。
関東甲信越地方もいよいよ梅雨明けになりました。
暑さ本番を迎えますね。
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外は熱気がむっと湧き上がり、蒸し暑さを一層感じる頃。
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都会の密集した地域では、冷房の室外の熱風によっても暑さが増してきます。
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冷房に頼るだけではなく、暑さをしのぐ工夫をしたいものですね。
日本人なら誰しも涼を感じる夏の風物詩・・
打ち水、夕涼み。
かき氷にスイカ。
風鈴に忍玉。
金魚すくいにヨーヨー玉。
浴衣と花火。
枝豆に冷たいビール。
蚊取線香に蚊帳。
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枝豆には、山形のだだちゃ豆、新潟の茶まめ、京都の丹波黒豆など、
さまざまありますね。
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日本人が氷を食べる習慣は、平安貴族の時代からあったようですが、
本格的には明治に入ってからです。
明治2年、横浜馬車道で町田房造によって氷水が、
その後、横浜の中川嘉兵衛によって本格的な氷が売り出されたとか。
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現代は冷蔵庫で手軽に氷が作れる時代になりましたけど、
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日本の夏を、一工夫しながら、どうぞお楽しみくださいませ。
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