今年、伊勢神宮に参拝に行かれた方も多いと思います。
豊受大神がお祀りされている下宮を訪れると、森閑とした雰囲気が漂い、別世界に足を踏み入れた感じがして、清々しい気分になれます。
人によっては、もうそこで満足して、内宮に行かずに帰ってしまう人もあるそうです。
下宮入口
豊受大神(豊受気毘売神・とようけびめのかみ)は、天照大神の食事を司る女神です。
豊かさの象徴である食物や穀物の神様です。そして、米作りや衣食住すべてにかかわる産業の神様でもあります。
転じて、女性らしい優美さや女性性の象徴ともいわれています。
内宮の鎮座よりも500年も後、雄略天皇の御代に、天照大神の大御饌(みけ)、つまり食事を司る神様として、丹波の国から伊勢の国に迎え入れられたとのことです。
鎮座以来ずっと、毎日朝夕二度、天照大神にお食事を差し上げています。
『古事記』でも『日本書紀』でも、言われてきたことですが、豊受大神は、七代の最初に現れた神々の一神とされることから、伊勢神道(度会神道)を興した下宮の神職であった度会家行は、このように言っています。
天之御中主神・国常立神と同神であって、この世に最初に現れた始源神であって、豊受大神を祀る外宮は内宮よりも立場が上であると。
ところで、庶民の商売繁盛を願う神様としてのお稲荷さんと豊受大神とは、何か関係があるのでしょうか。
お稲荷さん(稲荷神社)は、朱い鳥居と、神使の白い狐がシンボルとなっている神社として、よく見かけますよね。
先日友人の 中島裕実さん にご案内していただいた、六本木の久国神社という稲荷神を祀る神社があります。
こんなところにひっそりとたたずむ閑静で由緒ある神社。
歓待を受け、大変嬉しく楽しい時間を過ごすことができました。
稲荷神(稲荷大神、稲荷大明神)は、現在の伏見稲荷大社(山城国稲荷山(伊奈利山))に鎮座する神様で、伏見稲荷大社から勧請されて全国の稲荷神社などで祀られる食物、農業、殖産興業、商業、屋敷を司る神様です。
どおりで、屋敷内にも祀られているわけですね。
稲荷神(お稲荷さん)とは、宇迦之御魂神(うかのみたま、倉稲魂命のこと)のことなのです。
神道の稲荷神社では、『古事記』や『日本書紀』などの日本神話に登場する宇迦之御魂神(うかのみたま)、豊宇気毘売命(とようけびめ)、保食神(うけもち)、大宣都比売神(おおげつひめ)、若宇迦売神(わかうかめ)、御饌津神(みけつ)などの穀物・食物の神様を主祭神としています。
ですから、豊受大神と稲荷神は食べ物を守護するという点で共通していますね。
でも、少し違いがあるようです。
下宮の引っ越し前の古いお社
実は、伊勢神宮の内宮のほうには、宇迦之御魂神(うかのみたま)が守護する稲の倉庫があって、御稲御倉神(みしねのみくらのかみ)と呼ばれています。
神宮神田(伊勢市楠部町)で収穫された抜穂(ぬいほ)が保管され、天照大神に献上されるのですね。
内宮でお稲荷さんが天照大神に捧げる稲穂をお護りし、下宮で豊受大神が天照大神のお食事を司っている。
天照大神に捧げるお米と稲穂。そして、その最高の祭祀者は天皇です。
葦原の国、瑞穂の国と呼ばれる日本は、稲作がいかに大切なもので生活に根付いているか、その一端をここでも見ることができます。
豊受大神を祀る外宮と内宮との関係や、お稲荷さんと豊受大神との関係など、
まだまだ調べればもっともっといろんなことが学べそうです。