ビッグバン〜長唄「七福神」に見る国生みの話〜「古事記」

宇宙神 天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)

天地開闢の際に最初に現れた神、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)について、

前回お話しました。

実は、現代の物理学の一つの理論で言われていることと、とてもよく似ていると思われます。

 

時空の揺らぎの中から宇宙の卵が生まれ、

それがビッグバンを起こして現在の宇宙になったとする考え方です。

時空の揺らぎの中から宇宙が「成った」とされるのは、

「古事記」の上巻でも、神が現れるときには「成った」という表現がされているのと、

共通しているのがとても興味深いですね。

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高天原に最初に成りいでたこの神様は、登場するのはたったの一度きりですが、

実はその後の天地創造で成る神々様の背後にいて、表舞台には登場しませんが、

裏で宇宙を支えている存在なのでしょう。

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朝日

 

この「日本の原風景」も今年最後となりました。

一年間お読みいただきまして、ありがとうございました。

日本の古典芸能の世界を描き、

やはり日本人としてたどり着くのはバックボーンである日本の神々、八百万の神々のことだと、

私は思います。

そこで来年も引き続き「古事記」を学んでみます。

今年の「日本の原風景」は、日本の国造りをしたイザナギ、イザナミのお話をして、

締めくくりたいと思います。

五柱の登場の後、次の七柱の神々が成りますが、

その中の最後の二柱がイザナギ、イザナミです。

日本の「国生み」と「神生み」をした神々です。

実は、長唄「七福神」の冒頭にもイザナギ、イザナミの二柱が登場します。

イザナギ、イザナミは夫婦として、天の逆鉾を使って、

混沌とした海へポタポタと筆から雫を滴り下ろすように、

一つの島をお造りになりました。

そして、二柱は島の上に天下ります。

二人は初めに蛭子(ひるこ)をお産みになりました。

天照大神、月夜見尊(つくよみのみこと)、素戔嗚尊(すさのおのみこと)と、

神々をお産みになりました。

蛭子(ひるこ)は、骨も皮もなくふにゃふにゃだったので、海に流されてしまいました。

こんなふうに語られていきます。

日本舞踊の歌詞の中には、神々を崇めるフレーズがたくさん出てきます。

そういうものを自然に受け入れて、

歌と言葉と振りを融合させてきた先人たちの日常に触れる思いがしています。

 

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2013-12-29 15.34.29

 

この蛭子(ひるこ)は、中世の信仰の中で恵比寿信仰と結びつき、

七福神の一神の恵比寿様になったのです。

西宮神社の恵比寿三郎様として登場します。

そこでやっと「七福神」という題名と結びついていきます。

長唄「七福神」については、いずれまたお話しますね。

 

   伊弉諾伊弉冉(いざなぎ、いざなみ)夫婦寄り合ひ

  漫々たる和田津海に 天の逆鉾降りさせ給ひ

   引き上げ給ふ そのしたたりに

   凝りかたまって 一つの島を 月読み日読み

   蛭子(ひるこ)素戔嗚尊(すさのお)儲け給う

   蛭子と申すは恵比寿のことよ 骨なし皮なしやくたいなし

  三年足立ちたまわねば 手繰りくりくる来る船に

     乗せ奉れば蒼海原に 流したまえば

     海を譲りに受取りたもう 西の宮の恵比寿三郎

     いともかしこき釣針おろし

     万の魚を釣りつった姿は

     いよ   さてしおらしや

           (以上 前半部分)

 

イザナギとイザナミの二柱は、天浮橋から海に矛を下ろして、

「こおろ、こおろ」と海水を搔き鳴らして矛を引き上げます。

その先から海水が滴り落ちて、塩が固まって島ができました。

これが磤馭慮島(おのごろじま)です。

これは自然にかたまってできた島という意味で、どの島かは分かっていません。

 

その後二神は男女の交わりをなして、更に島々を生んでいきます。

蛭子のように失敗もありました。

再度挑戦をして、イザナギのほうから「なんて素敵な乙女よ」と

夫から妻であるイザナミに声をかけて交わることによって、

本州や四国、九州などの大地を生んでいきます。

かくして、今の日本列島(大八島・おおやしま)が出来上がりました。

 

その後も、風の神、海の神、山の神、土の神など、

更にこの世の森羅万象を表す神々をどんどん生んでいきます。

八百万の神々が生まれていきます。

 

当時の人は、ビッグバンなどを知らなかったでしょうし、

人類の誕生の進化なども科学的に知るよしもなかったのでしょうが、

宇宙の仕組みを直観的に理解していたのでしょうか。

人間の持つ宇宙の真理を知る能力、

この計り知れない力を古代の人々は持ち合わせていたことに敬服します。

 

イザナギが妻イザナギの死後、またまた衝撃的なことが起こっていきますね。

年が明けてから、また再開したいと思いますので、

今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

 

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