白鷺に魅せられて・・・歌舞伎舞踊『鷺娘』
ダイサギはシラサギ(白鷺)の仲間です。
この白い姿は葦原の風景の中で一際輝きを放っていて、人はこの姿に魅了されてしまいます。
かつて、江戸時代の浮世絵師鈴木春信が傘をさした白無垢姿の美人画を描きました。
そこから生まれたのが歌舞伎舞踊『鷺娘』です。
私も大好きな演目で、舞台で踊ったことがあります。
白鷺が人間の男性に恋をするのですが、それは悲しい結末となって終わります。
バレエ「瀕死の白鳥」のように、最後は地獄の責めにあい、息も絶え絶えに死んで
ゆくのです。
叶わぬ恋心をこんなストーリーに想いを込めたのでしょうか。
白鷺も人のそばにいて、ともに生きているのが好きだったのだろうと思うのです。
里山の風景って、人と水鳥が一緒にいる情景がとっても似合いますよね。
一人しょんぼり佇む白鷺の化身(国立小劇場にて)
最後に苦しんで苦しんで死んでいく白鷺は、鳥の分際で人間に恋をしてしまった、
その罰を受けて地獄の苦しみを味わうというものなのですが、
本当は、彼らが大好きな人間が彼らが住むところを奪ってしまって、
人間と一緒に暮らせなくなってしまった悲しさを訴えているのだと思ったのです。
私たちはあなた方をこんなに愛しているのに、
どうして私たちを追い払い、命までも奪うのですか・・・
そんな叫びが聞こえてくるようでした。
私も、舞台の上で、最後の苦しみの中で、鷺が羽をバタバタさせながら、
もがき苦しみ息絶えていくところを演じました。
ものすごく体力も要るのですが、
鳥たちの苦しみや叫びが聞こえてくるように思ったのです。
どうして人に恋をしてはいけないの?
ねえ、いいでしょう?
渡良瀬遊水地に行くと、晩夏から初秋にかけて約500羽を超える白鷺がやってきて、
ねぐらをつくって、壮観な光景を見せてくれるそうです。
水鳥や野鳥にとっては、魚や昆虫、植物など豊かな自然環境が必要です。
そこは、人間にとっても、鳥や自然と会話する素晴らしいオアシスです。
そう、人にとってのオアシスでもあるのです。
自然や鳥たちとの調和と共存。
私たちは彼らとともに生きていることを忘れないで生きていきたいですね。