冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也
昨日、立冬を迎えましたが、
暖かい日もあれば、寒い日もあって、日々いろいろに変化します。
それでも、北国からは初雪の便りがもうすぐ届きます。
もうそういう時期なのですね。
昨日お話しました江戸の着物で人気の鼠色。
これは黒から白まで100種類もあったというから、この感性と技術たるや、現代人もかなわないほどです。
江戸の中期までは上方主導の文化でしたから、着物も色目が華やかな友禅染めや、刺繍、総絞りなどを施していました。
ところが、後期になって、衣装に関する幕府の禁令が度々出たのです。
それまで町人の富裕層が衣装にも贅を尽くしていたのでしょう。
豪華な衣装を持っていても着てはならぬ、
値は二百五十匁限りとか、縫いのある衣類は禁ずる、とか。
そこで引っ込まないのが江戸っ子の意気です。
地味な色にもグラデーションをつける。
「四十八茶百鼠(しじゅうはつちゃひゃくねずみ)」なるものもうまれました。
町人上層の主に男性が考えた「表まさりの裏小袖」。
表は無地や縞柄で生地も木綿など質素に見えるのに、裏地は絹などにして凝った模様を染め出すなど、実はたいへん贅沢なことだったのですね。
男性の羽裏の柄の素敵なことは今でも語られていますね。
江戸後期に独特の美学が生まれたのは、むしろ幕府の規制があったればこそですね。
しかも、それを逆手にとって、新たなおしゃれを生み出す。
ただでは起きぬ江戸っ子の心意気。
今日もその気骨をいただきです。
お心肥やしでまいりましょう。