成田屋〜市川海老蔵の『鳴神』

当世、坂東玉三郎と市川海老蔵が出演する歌舞伎は大当たりです。

歌舞伎座の12月公演の夜の部は、市川家のお家芸、歌舞伎十八番の内『鳴神(なるかみ)』の通し狂言が上演されています。

海老蔵の演技を見ていると、父十二世市川團十郎の面影と声色がだぶってきます。

まるで亡き父が息子を見守っているかのように思えてきます。

何度も何度も目頭が熱くなりました。

不動明王2

 

市川家の屋号は「成田屋」です。

大向こうから「成田屋」と、ちょうどいいタイミングで掛け声がかかります。

その間合いの心地よいこと。

江戸時代の初め、寛永のころ、庶民階級は苗字を許されなかったため、

屋号を褒め言葉として用い、互いに屋号で呼び合ったということです。

俳優を屋号で呼ぶようになった一番初めは、この歌舞伎の市川家です。

初代市川團十郎が下総に住み、成田山新勝寺の不動尊を深く信仰していたことから、

 「成田屋」と呼ばれるようになりました。

海老蔵が市川家のお家芸を伝承し、その中でも「成田屋」の由来になる不動明王を描いた通し狂言『雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)』を今般上演することは、

歴史ある市川家の芸の継承と父團十郎の跡を継ぐことへの責任感など、さまざまな思いが交錯していることを痛感します。

不動明王の不動心。それは市川家の芸の中に息づいています。

市川家を応援せずにはいられません。

不動明王1