皆様、おはようございます。
文楽の人形遣い、人間国宝の吉田簑助さん。
『頭巾かぶって五十年』という著書の中で、海外公演の体験談を書いています。
海外の人の反応が意外なものだった例を挙げています。これらの演目をご存知かどうかはさておいて、
ちょっと文化の違いを感じてみてください。
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「道行初音の旅(みちゆきはつねのたび)」では、狐が恩を感じて、忠信の姿となって、静御前を護っているのですが、欧米では、どうしても理解されません。
狐が、欧米では、イソップ物語の悪役ぶりとして浸透していて、
人を助けるとは、だれも信じてくれないのです。
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「釣女(つりおんな)」では、大名が美女を釣り、太郎冠者が醜女(しこめ)を釣っ
て、日本では大笑いですが、
アメリカ人は、太郎冠者が釣った鼻が低く頬の赤いお多福のほうが、細面で整った美人よりも個性的でチャーミングというのですから、
オチにもならないのです。
仕方なく、お多福を男の三枚目の頭にしたものでした。
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「道行恋の苧環(おだまき)」では、求女(もとめ)を奪い合うお三輪と橘姫が、三角関係にありながら、なぜ三人で仲良さそうに踊っているのかというのです。
「阿古屋琴責(あこやことぜめ)」では、嘘発見器よろしく、阿古屋が弾く箏や三味線の音色の乱れで詮議するのですが、
侍が、単にフジヤマゲイシャガール遊びをしていると思われたようです。
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海外公演で、歴史、風俗、習慣の違いを感じて、笑ってしまうこともしばしばあるようですね。
それが、日本でも同じようなことが起こりかけているそうです。
例えば、「野崎村」で、お染が、箒に手拭いで頬かむりさせて、戸口に立てかけますが、これがなんだか分からないようだというのです。
嫌な、早く帰ってほしい客には、そういうおまじないをしたものですが、今は箒を知らない人がいます。掃除機にバスタオルを巻くわけにもいかず、困ったものです。
日本の子供たちにも箒を教えてあげないといけませんね。
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考えてみれば、日本人も外国人化してきているということですね。
日本人がこれから古典芸能を楽しく鑑賞するためにも、親子で鑑賞する機会を作ったり、子供たちの世代に日本の歴史、風俗や習慣を伝えていくことが必要かもしれませんね。
そして、オリンピックの関係で大勢の外人さんが日本にやってきますね。
胸を張って日本の文化を語ってまいりましょう。
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